楽卓 楽卓改め「和卓」(なごみじょく)(後編)

制作よもやま話

 前置きだが、いままで楽卓と称してきたこの卓の名を「和卓」(なごみじょく)と改めることにした。それがどうしたと言われそうだが、これも思い立ったのでそうしたまでで、商品ではないので思いつくままに遊んでいる。

写真は「和卓」の夏の設えである。前回の写真と比べていただくと、まず釜に代わっって電気のケトルになり、それに伴って柄杓と蓋置もなくなった。これだけでも少々涼しげになったように見える。

 

 前編に引き続き、和卓制作のエピソードをいくつかご紹介しよう。

 まずこの卓の最大の見せ場である炉縁の制作だが、この卓を作るにあたって、自分らしさがどうしても欲しかった。それが陶器の炉縁にたどりついた背景だ。長く続けてきた陶芸との接点を探しているうち思いついたのだ。

ただ、陶器は磁器ほどの精度が出ないのみならず、本焼きの窯の中でのひずみは避けられない。だから陶器で炉縁を作ろうなどということは本来無謀なことなのかもしれない。

写真の赤い炉縁は最初の作だが、風合いはともかく色が私の意図したイメージとほど遠い。それでも祈りは通じるもので二度目の窯で、なんとか良い景色のものができたのは幸運であった。

 


 次は卓に組み込む炉のユニットだが、電気とはいえ火を扱うので何より安全でなければならない。炉の部材が出来上がったところで燃焼テストを数回行った。小さな窯をかけ、湯を沸かし最大5時間ほぼ沸騰状態を保ちながら詳細に温度測定を行った。空気の対流をコントロールするための空気穴に若干の変更を余儀なくされたが、結果内面の温度上昇は+10度台に収まっている。空気が最高の断熱材であることを改めて学んだ。

 

 卓の天板は、いわば顔だ。この板、材料はケヤキだがもとはといえば昭和のちゃぶ台である。とある古材屋さんでみつけて買っておいたものを使っているが、美しい板目もさることながら、今どきこんな幅の乾燥した一枚板は、なかなか手に入るものではない。

この卓に限らずテーブルはだいたい天板の縁から傷がつくので、傷プロテクターと意匠を兼ねて、天板の縁に楮の手漉き和紙を裂いて貼っている。本物の手漉き和紙は想像を遥かに超える強靭なものなのだ。

 天板の仕上げは、やはり漆の出番だろう。薄く墨染を施した後、摺漆を重ねて仕上げている。ツルピカのケヤキは嫌だったので、思いに近い古び色に仕上がった。

 脚は手元の材料からホワイトオークを使ったが、こちらは置き場所が日当たりの良すぎる場所なので漆は断念してウレタン塗装で仕上げている、

 

 積み残しの問題点が無いわけではない。建水台を卓に組み込むかどうか最後まで迷っていたが、別に小さな台をつくれば用が足りると思ったままで未だに手がついていない。使い続けて随分になるが未解決の建水台の他には、困ったことは浮かんでこない。

自分に甘いのは承知だが、これはこれでひとつの完成形かもしれないとひとり自賛している。

前編 一平茶道 仲間や客人への一服