一平茶道 仲間や客人への一服

 数年前に写真の茶卓、名付けて楽卓(らくじょく)を作った。なにより楽しいことが大好きなので楽しくなるテーブル「楽卓」と安易な名をつけただけで大層な意味があるわけではない。

この卓を作った目的は、仲間や客人に手軽に一服のお茶を差し上げたいというのが原点だが、だからといって、正式な卓は大きすぎて置き場所がない。「無いものは作る」これが我が木工道である。

 

 茶道をたしなむ方は、立礼卓(りゅうれいじょく)という椅子に座って点前をする卓のことを想像されるかもしれないが、この卓はまったく似て非なるものである。

どこが違うかといえば、まず寸法が大きく異なる。この楽卓なるものは、私の勝手な寸法で作っており、正式な卓からすると、大きさが半分ぐらいのイメージだ。

ちなみに幅は72センチ奥行き50センチしかない。だから本式の卓のための点前には対応できない。

なぜこの小さなサイズになったかというのも単純で、この卓を置く場所は既に決まっており、限られた空間に合わせてどこまで小さくできるかが課題であった。

 設計は、最初から正式な点前など無視しているのだが、茶道の雰囲気をどう醸し出すかという部分に随分長い時間をかけた。

自分が長く陶芸をやってきたことから、焼締めの陶器で炉縁を作るということをまず決めた。茶道には季節によって冬場の炉と、初夏からは風炉と使い分けるが、この卓では私が炉が大好きという身勝手をとおして通年炉の景色を楽しむこととした。

 

 炉も茶道の世界では大きさ約42センチ(尺四寸)四方と決められているが、そんな基準に従うことはここでは論外だ。熟慮の結果、小ぶりな釜をかけるという前提で、寸法、深さを決定している。熱源は当初、炭も使えるようにと思ったが、手軽さを優先して電気とした。

最終的にこの卓の炉は31センチ四方という類例の無いサイズとなった。

 前述のとおり、本格的な点前に対応できないのは百も承知での開発だが、一方では、この卓を使ってのオリジナル点前、というより手順を考えながら設計しなければならないという事でもある。

ともかく世に無いものを作ろうというので、設計も制作も山程エピソードがあるのだがそれは後編でご紹介しよう。

後編、制作よもやま話に続きます