初心を大切に 砥石台を作った

 木工も漆の木地作りも道具が要る。電動工具が使えるところは活用するが、細かなところは、やはり手道具が必要である。電動工具は、力ずくという感じだが、手道具はそうはいかない。

中でも鑿(のみ)はとても繊細な道具で、常に最良のコンディションにないと言うことを聞いてくれないなかなか我儘なやつだ。

 ともかく研ぐ、使っては研ぐの繰り返しだ。木工家としての本来の修行はまず研ぎから始まるのではなかろうか。思えば料理も同じことで、細胞を捩じ切るような切れない包丁で美味いものなどできる筈がない。

よって、すべての作業はまず道具の手入れから始まると思っている。

 

 今年は11月に例年の展覧会と来年4月に別の展覧会の予定があり、一所懸命に作品を作らねばならない。年初でもあり、気持ちを締めなおしてと思い立って砥石台を整えることにした。

そんな大袈裟なことではないが、まずシンクに渡して砥石の台にする板を作る。これは我が家のウッドデッキの廃材だが、厚い檜の30年ものの古材を使った。削ってみたら美しい木肌とともに檜の香がするのには、いささか驚いた。

 今まで使っていたものとなんの差もないのだが、やはりいい気持ちというのが大切なように思う。

 その台の上に、砥石の台を置く。今までは砥石の付録のようなプスチックの台を使っていたが、このワンツースリーという日本の砥石台の名品を使ってみることにした。この砥石台、決して高価なものではないのだが、なんとはなしに、そこまでと思って買わなかったものだ。早速に中砥をセットして完成。砥石に向かうのが少しばかり楽しくなった。